CROSS TALK コープこうべの組合員や職員が、社会的課題の解決を実践している人に話を聞き、レポートしていく連載企画です。

CrossTalk 一般社団法人防災ガール田中 美咲さん×コープこうべ 難波 紀明

左:難波 紀明 右:田中 美咲さん

2017年11月20日

第9回 古民家で新しいプロジェクトが始まったんですね

コープこうべは、阪神淡路大震災のときに大きな被害を受けました。私は、職場の先輩から発災時の行動や地域での助け合いの話を聞き、それを伝えていくことが大切だと思っています。このたび、防災ガールの田中美咲さんの活動を知り、ぜひお話を聞きたいと滋賀県長浜市を訪れました。

なぜ防災を仕事にしようと思ったのですか。

東日本大震災のボランティア活動に参加したことがきっかけです。被災地域では、ボランティアの人たちに来てもらうのはすごく助かるし、嬉しいことなんですが、その期間は1日や1週間が多いんです。私は、被災された方たちがボランティアを受け入れることに疲れているように感じました。
一時的なボランティアではなく、継続的に被災された方たちに寄り添っていくことができないかと思ったんです。

当時、田中さんは大手IT会社に勤めていたそうですね。全く違う世界に踏み出すことに葛藤はありましたか。

そうですね、やりがいのある仕事をさせてもらっていたので、それを手放して、自分がやりたいことを実現するには覚悟がいりました。仕事とプライベートの区別もあいまいになるし、収入も激減して生活が不安定になります。
それで、「自分は誰のために人生を使うのか」を考えたんです。自分の命と時間を使って納得できる人生を作っていきたいと決断しました。

そして、防災ガールを立ち上げたんですね。

2013年3月11日に被災地支援で出会った3人で防災ガールを設立しました。始めは3人でしたが、友だちの友だちや大学の後輩が少しずつ増えていき、2015年3月11日に一般社団法人になりました。

一緒に頑張る仲間がいるって大事なことですね!

そうですね。防災ガールの初めての活動は「SABOI」という防災グッズの開発です。「防災をもっとおしゃれに、普段から持ち歩けるものを」というコンセプトで女性目線のフラットパンプスやポーチなどを作りました。

写真提供:一般社団法人 防災ガール

防災ガールの活動で、僕が一番気になっているのが♯beORANGEプロジェクトです。

♯beORANGEプロジェクトは、地域の住民と海に遊びに来ている人も巻き込んで、津波対策を考える防災です。2020年に東京オリンピックもありますし、これからは、たくさんの外国人も海を訪れます。グローバルな社会で、日本人にしか伝わらない防災ではいけないし、広がっていきません。海とともに生きていくことを考えた防災があるといいなと考えて立ち上げました。

それが、オレンジフラッグを使った津波対策ですね。

はい。津波が来る前にオレンジフラッグを立てて遠くからでも見えるようにし、海にいる人たちに津波が来ることを知らせます。フラッグ目がけて逃げると避難場所に辿り着くというものです。視認性があって、言葉に頼らないで避難できます。
このプロジェクトでは、住民が知っていて参加してくれていること、住民の意見が反映されていることを大事にしています。今は全国で200本以上のオレンジフラッグが設置されています。

行政主体ではなく、住民を巻き込んだ防災対策ですね。ちなみに、防災ガールが選ぶ「津波防災対策」自治体ランキングで、ランクインしているのが兵庫県では南あわじ市だけなんです。須磨海岸がある神戸市も入っていると思っていたんですが・・・。

滋賀県長浜市に拠点を移して、新しい取り組みを始められたそうですが。

はい、「WEEL」という活動を始めました。スタッフ3人で、ここに住んでいます。

今おじゃましているのは古民家ですが、ここでどんなことをされているんですか。

わざと何もしないようにしています。避難持ち出し袋や保存水も備蓄しないで、防災を意識しないくらしをしています。“防災対策”を意識したら、それが特別なものになってしまい続けられません。毎日のくらしの積み重ねが防災になっていたら、一番いいことなんです。

いつものくらしが防災になっているということですか。

たとえば、ここには地域で助け合うつながりや、地域で守っている水源があります。日ごろのお付き合いで地域の人たちと助け合える関係ができています。おじいちゃんやおばあちゃんが作っている自慢の漬物は、いざというときの保存食になります。一人ひとりが備えるのではなく、普段のくらしやコミュニケーションが備えになっていることが理想です。ただくらしていることが防災になっていることをめざし、ここで発見したことを発信してこうと考えています。

写真提供:一般社団法人 防災ガール

もともとは東京で活動されていたのに、長浜市を選んだのには理由があるのでしょうか。

これまでの3年間で私たちは防災に関するスキルと知識を積み重ねてきました。それをどうアウトプットしていくのか、防災をもっとくらしに近づけるにはどうしたらいいかを話し合って、探した場所がここだったんです。

田中さんが大事にしている思いはありますか。

「自分で決断すること」と、「思考を停止しないこと」です。人のせい・時代のせいにするのではなく、自分の人生だから自分で決断することを大切にしています。
今起きていることは自分が引き起こしたこと。自分が変われば世の中が変わるって思っています。

これからめざす防災ガールの姿はどのようなものですか。

「防災」という言葉の堅いイメージを変えたいです。従来通りではなく、社会の変化に合わせてアップデートして、「防災」をもっと身近なものにしていきます。
防災の未来を作る旗振り役として走っていくのが使命だと思っています。

ところで、僕は仕事柄、休日でも人とすれ違う時、満面の笑みで会釈したりするのですが、田中さんにも職業病みたいなことってありますか。

それ、難しい質問ですね。
なんとなくですが、危険を察知する感みたいなものがあります。霊感が強い人の防災バージョンみたいな?ここは危ないなとか、この人はパニックになりそう…とかかな(笑)

一般社団法人 防災ガール

防災が当たり前の世の中をつくる。そのためにこれまでの防災の概念を変え、次のフェーズに合わせた新しい防災のカタチを提案し、行動する。20~30歳代の若者100人以上とともに、全国で活動している
URL:http://info.bosai-girl.com/

インタビューを終えて・・・

私がコープこうべに入所したのは2015年、阪神淡路大震災から20年の節目の年でした。震災を知らない職員が増え、震災当時のことを知る先輩職員が少なくなる中、「ちゃんと伝えていかなければならない」と思いました。地元中学生とのワークショップで防災について考えたりもしました。今も仕事で訪問する組合員さんと避難場所の話をするようにしています。
田中さんの話を聞いていると、「防災の意識を変えたい」「防災をもっと日常に溶け込ませたい」という思いがジンジンと伝わり、とても共感しました。また、もう1つ、人生の決断をするときに田中さんが大切にしたという「誰の為に自分の人生、命を費やすか」。私は、これまでそんな思いで何かを決断をしたことがなかったので「すごいな!」と思いました。♯beORANGEプロジェクトやWEELプロジェクト。結果を出していく田中さんの活動をこれからも注目していきたいです。
そして、私ももっと災害や防災を知り、もし災害が発生した時には、自分が学んできたことを生かして地域の人たちの命を守れる存在になりたいです。

文:難波 紀明(2015年入所)

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