CROSS TALK コープこうべの組合員や職員が、社会的課題の解決を実践している人に話を聞き、レポートしていく連載企画です。

CrossTalk 特定非営利活動法人インターナショクナル 菊池 信孝さん×コープこうべ 岩田 健二朗

左:菊池 信孝さん 右:岩田 健二朗

2017年11月2日

第8回 後編 すべての活動が「食」でつながっているんですね

NPO法人インターナショクナルの菊池信孝さんへのインタビュー続編です。前編では「FOODPICT(フードピクト)」を中心に書きましたが、 今回は新しいコミュニケーションツールについてと、今後の活動について伺いました。

【前編】を読む →

写真提供:NPO法人インターナショクナル

これは、災害時の避難所における情報提供とニーズをつなげるツール「COMMUNICA(コミュニカ)」です。

これすごくいいですね!

初め、いくつかの自治体にサンプルを持って行ったんですけど、すでに独自で作成していて、あんまり相手にしてもらえなくて。

そうなんですか...。

でも、それぞれの自治体ごとに作っているので、内容やデザインがバラバラで、統一した方がいいんじゃないかなと思っていたんです。そうしたらちょうど総務省の「情報難民ゼロプロジェクト」と関連する仕事が決まって。避難所で最初に登録する避難者登録カードの全国版を担当させていただくことになったんです。

これって「FOODPICT(フードピクト)」とは違った取り組みですか?

ちょっと異分野というか。でも、「COMMUNICA」ができたのも「食」が大きく関わっているんですよ。

ということは「COMMUNICA」も「食」から始まったのですか?

はい、東日本大震災がきっかけです。復興庁の方から避難所で食事のコーディネートをして欲しいという依頼をいただきました。私ごとですが、当時はちょうど子供が生まれる直前で、家族の側を離れるわけにはいかなかったので、神戸からお手伝いをさせていただきました。
その中で見えてきた課題が「避難所における食事のコミュニケーション」だったんです。例えば、本人はアレルギーがあって食べられないんですが、周囲からはどうしてこんな時にわがままを言うんだと非難されたり、留学生がコミュニケーションを取ることができず、避難所で生活ができなかったりといった問題が起きていたことが分かったんです。
この課題に「FOODPICT」で培ってきた「言葉だけじゃなく文化的な違いを超えてコミュニケーションをサポートする」「プログラムを作る技術」を生かせるんじゃないかと考えたんです。
そこで、東日本大震災や阪神淡路大震災、熊本地震や鬼怒川の水害で被災した人や支援した人243人にヒアリングし、「どんなことが避難所でトラブルの原因になったのか」を調べました。そこから、避難所でのコミュニケーションに絶対必要なことを「食事」「医療」「生活」に分けてカードにしたんです。

このカードが町のわかりやすいところにあると心強いですね。もう少し教えてください。

「COMMUNICA」は、いざという時に使えるパスポートサイズの災害時避難所コミュニケーションカードです。
例えば、「食事」のカードには、何人分の食事がどのような理由で必要なのかを記入する欄があります。また、アレルギーを持っていたり、宗教上の理由で食べられなかったりする食材を「FOODPICT」で伝えられるようにしています。これで簡単に食事面での意思表示ができます。
「医療」のカードには、自分の症状や、必要な薬があるのかということを伝えやすいように、「生活」のカードには、自分が話せる言語や持っている技術、手伝えることをチェックできるようにしています。
他にも、避難したことのない人や、避難所というシステムがない国の人のために、「避難所では最初に避難者登録をすること」「食事や情報は無料で提供されること」「避難所はサービス施設ではないので、互いに助け合いましょう」といった説明も記載しているんです。

今後の展望などについて教えてください。

大きなテーマは2つあります。1つ目はデジタル対応ですね。アナログにはアナログの良さがあるんですが、より使いやすいツールとして世界にも広めていきたいと考えています。
ピクトグラムの弱点は目が見えないと使えないことです。そこで「COMMUNICA」をアプリケーション版に開発しています。音声で自分の情報を伝え、きちんとコミュニケーションをとることができるようになればと。
それと「FOODPICT」のグルメサイトを考えています。たくさんある飲食店から自分が食べられない食材を除外して検索できるようにしたり、予約できるようにしたり。海外旅行者向けのメニュー提供が手軽にできるようにして、小さな飲食店にも活用してもらいたいなと考えています。
2つ目は、学校の教材としての活用です。
高校の英語や家庭科の教科書にも「FOODPICT」を取り上げてもらっていて、異なる文化の存在や多様性について学習してもらう機会が増えてきています。
あっ、大事なことを忘れていました。今年1月、「FOODPICT」部門を株式会社化したんです。今まで以上にスピード感を持って事業に取り組みたいのと、海外の食品市場へも展開して、「FOODPICT」を活用したサービスを広めていきたいと考えています。
僕たちの活動のベースは「安心して食事をすることができる環境を提供すること」です。食材が不安で食べられなかったり、誤飲誤食といった事故を防ぐことはもちろんですが、食事を通して多様性の交流を深めるという付加価値を今後も提供していきたいと考えています。

写真提供:NPO法人インターナショクナル

特定非営利活動法人 インターナショクナル

宗教や文化、体質などの理由で「食べられないもの」「食べてはいけないものがある人」が、安心して「食」を選ぶことができる事業を核に、多様性・多文化の理解と交流を広げて、誰もが自分らしくいられる共生社会をめざしている。
URL:https://www.designtodiversity.com/

インタビューを終えて・・・

「バリアをなくすツールを作って広げることが好きなんです。丁寧に広げていきたいですね」菊池さんのインタビューの中で特に印象に残った言葉です。
菊池さんは、実際に当事者の方から話を聞いて問題を探し、何が課題なのかを把握してから行動に移されています。丁寧に考え作り上げられたツールであるからこそ、使う人にとって安心できるものなんだと改めて実感しました。
私が思っていた菊池さんのイメージは、ものすごく活発で元気な人でした。でも、実際にお会いすると、ドンとしたオーラがあるというよりは、フワッとした優しい人柄で、すごくフランクで話しやすい人でした。穏やかな雰囲気の菊池さんですが、異文化や多様性を受け入れあう社会を実現するという目的は揺るがない、芯が強い人だとインタビューを通して感じました。
菊池さんとお話ししてから、自分の仕事は何につながるんだろうと改めて考えました。
私は今、これからの高齢化社会に関心があります。
一人でくらす高齢者や、介護をする人がどんどん増えても、みんなが安心して歳をとっていける社会にしていきたい、そのために自分の仕事の一つひとつをつなげていきたいと考えています。介護する人、される人、介護に関わる全ての人の思いをつなぐことで人生は輝く。みんなが幸せな気持ちになれる環境を作って広げるために、努力していきたいです。

文:岩田 健二朗(2014年入所)

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