CROSS TALK コープこうべの組合員や職員が、社会的課題の解決を実践している人に話を聞き、レポートしていく連載企画です。

CrossTalk 特定非営利活動法人Ubdobe岡 勇樹さん×コープこうべ 岩清水 健太

左:岡 勇樹さん 右:岩清水 健太

2017年8月21日

第7回 「エゴイズム丸出し」で考えていきたいです

私は1年前に異動になり福祉事業に携わっていくうちに、いろんな人に福祉介護のことを知ってほしいと思うようになりました。そんな時に、医療福祉についておもしろく、かっこよく、カジュアルに情報発信しているNPO法人Ubdobe(ウブドベ)の岡さんを知り、ぜひお話を聞きたいと思いました。

Ubdobeの活動について教えてもらえますか。

事業は4つ柱があって、イベントとデザイン、ショップ、メディアです。社会福祉法人や行政からの受託でポスターやロゴマークをデザインしたり、イベントを開いたりもしています。イベントは6つぐらいやってます。

「SOCiAL FUNK!」というイベントに興味があります。

そうですか!今年11月26日に渋谷のSOUND MUSEUM VISIONっていうデカいクラブがあるんですけど、そこで開催します。

VISION行ってみたいクラブです!

VISIONいいんですよ!音も爆音だし、ステージ4つぐらい作れるし。そこで障がいをテーマにしたクラブイベントをやります。

医療福祉をテーマにしたクラブイベントってどんな感じなんでしょうか。

クラブイベントのDJとライブの合間に、医療福祉をテーマにしたトークや映像を上映するんです。
みんながよく知っているミュージシャンやアーティストが出演するので、会場には、その人のファンや音楽好きな人がたくさんいます。トークは、テーマによって、当事者や患者、その遺族だったり、医師などの医療関係者だったり、医療福祉の制度を作っている行政の人だったり。1つのテーマに対していろんな立場の人の意見や考えを聞いていくという感じです。
基本、クラブイベントなんでお酒が入ってますね。「病気になった気持ちは?」みたいなことを聞くこともあるんですよ。でも、ちゃんと答えてくれて、みんなが知りたいと思うことを話し合える貴重な場になっています。

「SOCiAL FUNK!」をやろうと思ったきっかけについて教えてください。

昔から音楽が好きでクラブに通ってたし、大学時代も「Ubdobe共和国」ってバンドを作っていろんなところで演奏していました。そんなときに、母親のがんが分かりました。1年間で10kgも痩せてるのに気付かなくて。それでも、そんなに深刻な病気だとは思わずに接してました。母は2年間闘病をして、半年間入院して、いきなり容体が悪くなって亡くなりました。すごくつらかった。
でも、“いきなり”なんかじゃなくて、僕ががんという病気がどんなものなのかを知らなかったからなんです。何もしてあげられず、母に孤独な闘病生活をさせてしまいました。
クラブとかで遊んでる僕の友達に、同じような後悔をしてほしくないって思って「SOCiAL FUNK!」を始めました。「医療福祉の情報を少しでも知って、家族や身近な人に還元しましょう」っていうのがイベントの目的です。2010年に開催した1回目のテーマは「がん」にしました。

初めての「SOCiAL FUNK!」の反応はどうでしたか?

めっちゃよかったです!出演ミュージシャンのファンの人たちが「来てよかったわ!マジで!」って言ってくれました。アンケートにも、「とても良かったにマル!」って書いてくれて。すごく怖そうなお兄さんが、「お前いいな!いいイベントやってんな!!」って言ってくれて「あざーす!」みたいな感じ。
新鮮な風景でしたよ。「家に帰ったら、今日のこと母ちゃんに話すわ!」と言ってくれる人もいて、それがまさにやりたかったことだったからすごく嬉しかったです。

子ども向けのイベントもされてますよね。

「Kodomo Music & Art Festival」です。年齢や性別、国籍、障がいの有無を越えて芸術活動を通してあらゆる子どもがコラボレーションするイベントです。2008年に始めました。
当時、会社員をやめて、専門学校で音楽療法を勉強していました。実習で、障がい児施設とか高齢者施設で音楽活動をしていたんですが、ある時、離島の障がい児施設に行ったんです。
みんな音楽を楽しむパワーがあふれてて。でも、自由に島から出られない事実を知りました。子どものころに入所してから一度も島を出たことがない人ばかりで、30年間もずっと島にいる人もいました。出られないんだったら、島にいろんな人が集まって知り合って、交流が生まれたらいいなって、離島でのイベントを企画しました。でも、離島へはフェリーしか手段が無くて開催時期には欠航のリスクがありました。
それなら、まず東京で専門学校周辺の小学校や支援学校、障がい児施設の子どもたちをみんなひとつの場所に呼んで同じコンセプトでやろうって企画したイベントが「Kodomo Music & Art Festival」です。200人ぐらい来てくれて、盛り上がりました。翌年も代々木公園を借りて開催しました。ラッパーとかシンガーとか和太鼓バンドとかDJとかいっぱい呼んで、2500人ぐらい集まりました。大成功したんです。
それで、次は5000人くらいのでっかいイベントにしようと準備に1年間かけて企画しました。遊園地借り切って、ステージを5個ぐらい作ったんですが、1日目が土砂降りで。保険かけてなかったので、1000万円近くの借金が出来てしまいました。

1000万円ですか!かなり厳しいですね。

すごく落ち込みました。離島で出会った人たちがルーツの活動をこのまま止めることだけは避けたかったんですが、負担が大きすぎて。いろんな人に相談に行きました。
そのなかで、高額の資金を貸してくれていた音響会社の社長に「破産するかもしれません」と言ったら、すごい怒られたんです。「将来、自分の子どもが障がいを持ってうまれてくるかもしれない。でも、Ubdobeの活動があれば安心して子育てができると思って支援したのに、お前は金が原因でやめんのか!」って。それから2年半ぐらい返済を待ってくれました。
あのときの「Kodomo Music & Art Festival」がなければ、Ubdobeは存在しないです。自分はUbdobeは一生やめれないなと思いました(笑)

「Kodomo Music & Art Festival」はUbdobeの起源みたいなイベントなんですね。岡さんは、他にもさまざまなイベントをされていますが、医療福祉に関心がない人への呼びかけや情報発信についてお聞きしたいのですが。

情報発信はフライヤー作って配って、SNSに情報のっけて、クラブ系のニュースサイトからプレビュー出して。昔から変わってないです。でも、出演するミュージシャンやライブアーティストにはこだわってます。
「あの人が出るイベントなんだ!」という入り口があって、「医療福祉のイベントなんだ!どんなイベントなんだろう?」って思ってくれて来てくれる人が多いんです。「観たいミュージシャンが来るからイベントに参加したら、なんとなく医療福祉の話も聞けた」みたいな感じになっています。ミュージシャンがツイッターとかで発信してくれると、フォロワーがリツイートして情報を拡散してくれます。
医療福祉に関心がある若い人はいなくて当たり前だし、自分の興味があることに夢中になっている方が健全だと思います。

写真提供:NPO法人Ubdobe

自分の話になるんですけど、職員向けのSNSで福祉事業について発信するんですが、宅配や店舗で働く職員は興味を持ってくれてるのかなぁと思うことがあるんです。

興味ないでしょ基本!

そうですよねー。コメントの記入もほとんど無いので、興味もってもらえてないんだろうなと思ってます。

どういう発信してるんですか?

「今日はこんな研修に参加して、デイサービスでリハビリゲームをしました。すごく盛り上がったので、その時の写真を添付します」みたいなことを投稿しています。

なるほどー。多分、事実発信って若い人は誰も興味ないと思うんですよね。中年層の人たちは、ニュースとか新聞で情報を取り入れるけど、若い人ってそういうことには興味がないのが当たり前なんですよね。今何歳ですか?

32歳になりました。

32歳ってもうおじさんじゃないですか(笑)30歳過ぎたら自分でやらない方がいいと思う。若い人たちを現場に呼んで、実際に体験してもらって、どうやったら同世代に響くのか聞いて、発信してもらった方が絶対効果的だと思う。

確かに。今、自分がおじさんなんだってすごく納得しました(笑)

“誰も興味がない”って思ってないと、誰かの為だけに発信を寄せてしまうと思いますよ。イベントで1回だけ一般ウケを狙ってアーティスト呼んだことあるんですけど、自分がすごいつまらなかったんです。だから今は「俺が好きだから!」って理由で出演アーティスト決めるようにしています。エゴイズム丸出しで、自分が一番楽しいって感じる空間しか作らないようにしています。

周りの声を気にすることなく動かれてるんですね!

その方が、みんな興味を持ってくれます。当たり障りのない発信は誰も興味がないです。リスクをしょってる発信だと、「誰かに教えてみようかな」って応援してくれると思う。だから、「岩清水ブログ」とか作って、とことんエゴイズム丸出しでやったらいいと思う。で、上司に怒られたらいいと思う(笑)

怒られるんですね(笑)

でも、思いがあれば人は分かってくれるから!!

Ubdobeのイベントに対して否定的な声が上がることはないですか。

「がん」のイベントをやったときは、クレームみたいなのがありました。病気を利用して稼いでやろうみたいに思われたみたいです。だけど、イベントの主旨や自分の経験を説明したら応援してくれました。それぐらいですね。
演出がクラブイベントだったり、ミュージシャンのライブだったり、フェスだったりするだけですから。そんなこと気にするよりも、どう楽しい空間を作るかということに集中するほうを優先します。
僕は、周りの人に助けられています。借金を抱えた時もですけど、困ったときには誰かが助けてくれる。僕は細かい調整が苦手なんですけど、うちのスタッフが優秀なんですよ。「こんなことやる!」っていうと、きちんと調整をすすめてくれる。たまに自由にしすぎて、叱られることはありますが(笑)

これからやろうとしている、新しいことを教えてください。

Ubdobeのもう1つの事業で、ユニバーサルデザインの食器や文房具なんかを置いている「HALU」というセレクトショップがあります。障がいを持っている子どものお母さんたちと話をする機会があって、生活していくうえでの悩みや疲弊感があることを知ったのがきっかけでした。そんな、家族が抱える悩みを相談したり、ホッとできる場所を作りたいと思ったんです。相談窓口だけじゃなくて、いろんな人が集まってくるオープンなスペースにしたかったから、子どもたちが使いやすい食器や文房具を置いてショップというカタチにしました。
その「HALU」で、食器とか椅子とか全部がユニバーサルデザインのカフェをしたいんです。車椅子の人が来たら机の高さを変えられたり、キッズスペースがあったり、使ってる野菜も農福連携(※1)でやりたいと思っています。 そこにラジオブースを作って、ミュージシャンを呼んで医療福祉のこととか聞いてみたら、おもしろい話を発信できるんじゃないかなと思っています。

他には、国際展開を考えています。Ubdobeでは場所を持たないコミュニティ型支部が各地にあります。地域ごとに医療も福祉も違うから、仲間同士で情報交換をしています。それを、フィンランド、ガーナ、ニューヨーク、サンフランシスコ、シンガポール、台湾に広げたいと思っています。国ごとの医療福祉の情報を交換し合って、自分の国や地域で医療福祉を良くしていけるといいなと思います。

※1農福連携:障がいを持つ人が担い手となる「農業」と「福祉」が連携する取り組み

ありがとうございました。11月の「SOCiAL FUNK!」が楽しみです。

ぜひ、来てくださいね。今年の「SOCiAL FUNK!」の目標は、医療福祉に関心がない人をもっと呼ぶことです。これまでは、6割ぐらいが医療福祉に興味がある人で、4割がミュージシャンのファンなんですけど、その割合を逆転したいです。

特定非営利活動法人 Ubdobe

「音楽×アート×医療福祉を通してあらゆる人々の積極的社会参加を推進する」ことを目標に、さまざまな「医療福祉エンターテインメント」を企画・開催。代表理事の岡勇樹さんは「東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部 ユニバーサルデザイン 2020 関係省庁等連絡会議 心のバリアフリー分科会」の構成員でもある。
URL:http://ubdobe.jp/

インタビューを終えて・・・

岡さんへのインタビューが決まってから、Ubdobeについて調べていたこと、各種SNSで岡さんの日々の動向をチェックしていたこともあって、実際に岡さんにお会いした瞬間は、まるで芸能人と対面したような感覚でした。そのせいか、始めのうちは、すごく緊張していました。でも、音楽の趣味が同じで話が盛り上がったり、岡さんの穏やかな口調のおかげで、いつの間にかお兄ちゃんと話をしているような感覚になりました。たくさんの人と関わって、巻き込んで、医療福祉を盛り上げている岡さんだから、私の緊張がほぐれたのだと思います。
インタビューの中で、「誰かのための発信ではなく、自分が好きなことをやっている先に、医療福祉の情報がある」という言葉が印象に残りました。「医療福祉の情報や知識がないために、つらい思いや悲しい思いをしてほしくない」という気持ち。岡さん自身が本当に楽しんで、情報発信に取り組んでいるということがあふれんばかりに伝わってきました。
ご自身の活動について、お話しされる岡さんの姿をみて、私も一緒にワクワクしました。
これまで私は、福祉や介護について、自分とは関係ないことで、ある種閉塞的な世界だと思い込んでいました。でも、福祉事業に携わってみると、介護を必要とする人と、福祉介護に関する当事者がどんどん増加している状況を目の当たりにしました。何も情報がないまま当事者になると、その入口が、つらくて、しんどいものになってしまいがちだということも痛感しています。より多くの人ができるだけ早い段階でカジュアルに医療福祉の世界について触れることができれば、福祉はもっと盛り上がるのではないかという思いが、自分の中でより明確になりました。
福祉事業に携わっている一人として、自分になにができるのかを「エゴイズム丸出し」で考えていきたいです。

文:岩清水 健太(2008年入所)

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