コープこうべ商品検査センター
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健康食品・サプリメントのうそ・ほんと  Vol.15
金沢 和樹  

プロフィール 
神戸大学大学院 農学研究科教授

コープこうべ商品検査センター顧問

 

 

 

15.血圧と食塩 

夏は汗をかいて塩分を失ってしまい、体がだるくなるという夏バテの季節です。しかし塩分をとりすぎると血圧が上がります。夏バテと高血圧を防ぐ適切なサプリメントはあるのでしょうか。

ー血圧とはー
人は血管から老いるといわれています。血圧が高ければその圧力で血管が破れて内出血し、危険な状態になることがあります。血管にコレステロールなどのごみが溜まれば、安静にしていても血圧は高くなります。つまり血圧はもっとも手軽に判る健康のバロメーターです。血液が血管を押す力が血圧です。心臓が血を送り出すときは強い圧力がかかりますが、これを心臓の収縮期血圧といい、130以下が正常といわれています。送り出してから次に送り出すまでに心臓は膨らんで血を蓄えます。これを拡張期血圧といい、85以下が理想とされています。


図23を見てください。血圧が上がる原因です。恐い目に会って驚いたり、喧嘩をしたりするとアドレナリンが分泌され興奮します。これは体の緊急応答です。興奮するとすぐに血圧が上がり、数時間すると下がります。また、脳が神経伝達物質で調節する血圧があります。この血圧は多くの場合ストレスが原因で上がります。他に、肝臓と腎臓が調節しているレニン・アンジオテンシンという系があります。そしてもっとも問題なのが体液調節による高血圧です。これは食塩のとりすぎが原因です。食塩を食べてもすぐに血圧は上がりませんが、一度上がると体内の食塩濃度が十分に薄くならない限り血圧は下がりません。私たちの体ではこの4つが別々に起こるのではなく、多くの場合同時に起こり、それぞれの血圧が加算されます。例えば、食塩の取りすぎやストレスで普段から血圧の高い人が緊急応答で興奮しますと、一気に大変高い血圧になり、血管が破れて脳卒中などをおこします。しかし、緊急応答は体の正常な応答ですから避けにくいものです。その他の3つを普段からできるだけ低く抑えることが重要です。レニン・アンジオテンシン系には主にお医者さんが処方しますので、自己管理という意味で残りの2つを考えます。

―ギャバ
脳による血圧調節のときに体を弛緩させ血圧を上げるために分泌されるのがガンマ・アミノ・ブチリック・アシッド、頭文字をとって、GABA、ギャバです。これはアミノ酸のグルタミン酸から体内で作られる神経伝達物質です。ギャバを多く含む食品がありますが、その食品をよほど多量に取らない限りギャバは消化吸収時に消費されて消えてしまいます。サプリメントのギャバは消化管で消える量を考慮していますので、有効であることが多いようです。例えばこのような実験がありました。高所恐怖症の人に目隠しをして渓谷の高いつり橋の真ん中まで連れて行き、目隠しを外しました。その人は体を震わせ涎を垂らしてその場にしゃがみこんでしまいました。このときギャバを与えると涎がおさまり、歩ける状態ではありませんが、震えが少しおさまりました。これは乱暴な試験ですが、効果があることは理解できます。サプリメントのギャバは体をある程度リラックスさせるという意味で「ほんと」だと思います。

―ルチン
私たちの体の細胞はエネルギーを作るためのブドウ糖を取り込むときにナトリウムとカリウムを利用します。ナトリウムと一緒にブドウ糖を取り込み、代わりにカリウムを放出します。体内のナトリウムがカリウムよりも多いときは、十分にブドウ糖を取り込めないだけでなく、細胞はナトリウムの浸透圧で膨れ上がります。これが高血圧です。つまり体内ではカリウム濃度の方がナトリウム濃度よりも少し高いのが理想です。ナトリウム濃度を下げるためには腎臓から尿にそれを捨てなければなりません。このときにナトリウム輸送タンパク質が働きますが、このタンパク質が正常に機能しなければ高血圧が続きます。
耳のナトリウム輸送タンパク質が不調ならば鼓膜が張って難聴になります。このタンパク質を正常に働かせる物質があります。ケルセチンとその仲間のルチンです。そばのルチンが血圧を下げるというのがこれです。効くのならばサプリメントでたくさん摂りたくなりますが、たくさんとってもほとんどが排泄されますので、サプリメントで摂ってもそばを食べても効果は同じです。それよりももともとの原因、食塩のとりすぎをおさえることの方が大切です。

―食塩を減らそう
日本人の食塩摂取量は一人一日12グラムあまりで、諸外国が5グラムほどを推奨しているのに比べると、嬉しくない記録です。食塩とは塩化ナトリウムです。ナトリウムは必要な成分ですが、日常の食素材にも食品成分に結合した形で含まれていますので、日常食品を食べるだけで十分必要量を充たします。食塩として別途にとる必要はありません。また、胃がんの直接の原因はピロリ菌などによる炎症ですが、その炎症を促進して胃がんにするのは食塩です。胃の細胞の浸透圧を上げて細胞を変化させてがん化を促進します。食塩をとる量は少ない方がよいのです。ゼロにできなくても、できるだけ少なくするのが理想です。
人の味覚は酸っぱさや苦さには敏感ですが、塩辛さと甘さには慣れやすく、1回目よりも2回目はより塩辛いもの、より甘いものを求めてエスカレートします。子供に甘いものを与えると初めは喜びますが、2回目以降はより甘いものでなければ美味しいと言いません。日本人の塩辛さ好みは子供のときからの積み重ねです。しかし、もう一度初めからやり直すことができます。
苦しいですが、調理場と食卓から食塩を、醤油も含めて、半年間ほど除いてみてください。それからほんの少し食塩や醤油を使った料理に変えます。素材の味がいかにすばらしいかが判るようになります。食べ物の本来の味がわかり、生きている喜びを感じるほど食事が楽しくなり、過食がなくなります。出来合いの惣菜を食べなくなり、そして食素材を選ぶ目ができ、その上、高血圧がなくなります。

―夏バテ防止―

カリウムも塩辛い塩ですが、カリウムの欠乏は夏バテの原因です。カリウムとナトリウムの入換えを利用して細胞は細胞内にブドウ糖を取り込んでいますが、汗をかいて汗とともにカリウムが失われると細胞はブドウ糖を利用できなくなり、エネルギー不足でバテます。カリウムをナトリウムより多めに補給すると夏バテは解消します。野菜や果物はカリウムをナトリウムよりも多く含んでいます。海藻のコンブやワカメは塩辛いですが、カリウムをナトリウムのほぼ2倍含んでいます。これらは高血圧を予防して夏バテを防止します。飲料ならば茶飲料が最適ですが、スポーツ飲料でも表示を見て、ナトリウムよりもカリウムの方が多ければ、夏バテ防止効果は「ほんと」です。でも、やはり、野菜果物を美味しく楽しく食べるのが本当の意味での「ほんと」でしょう。

 

 



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