コープこうべ商品検査センター
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2009年5月度の検査報告
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健康食品・サプリメントのうそ・ほんと  Vol.13
金沢 和樹  

プロフィール 
神戸大学大学院 農学研究科教授

コープこうべ商品検査センター顧問

 

 

 

13.食べながらやせることはできる? 

 

ー食習慣と丸型やせ型ー
図18の変った絵を見てください。丸型とやせ型の体形の表面積を比較したものです。大きさつまり体重が同じという前提でなければ比較になりませんので、仮に体重が65 kgの人で図を描いてみました。表面積がもっとも小さい立体は球ですから丸型の体面積はやせ型よりも小さく、丸型を100%とするとやせ型は125%の体面積になります。 寒いモスクワの平均気温は4℃、シンガポールは27℃です。

 

現在のようなエアコンがない時代の人々は、いかに厚着をしても寒いところは寒い。体面積が広いと体熱が逃げてしまって体力が尽きます。逆に暑いところでは気温が体温を上回る季節もあり、上回ると代謝酵素がはたらかなくなって命にかかわりますので、暑いところでは体熱をできるだけ発散しなければなりません。そのためには広い表面積が必要です。男性の局部はひだをなしています。もっとも大切な子孫を残す生殖器をオーバーヒートから守るためのラジエターです。そして、昔の絵画などを見ると、寒いところの人は太り気味で、暑いところの人はやせています。

 

 

ーカプサイシンー
意識して寒いところの人は丸型に、暑いところの人はやせ型になったのではありません。それぞれの環境で育っている食物を食べて必然的にそれぞれの体型になったのです。寒いところでは活発な農業栽培はできませんので畜産が主でした。人は動物の肉や乳製品を主食にしましたが、動物とくに寒いところの動物は肉に脂肪を多く含んでいます。人はその肉を食べて脂質を皮下に蓄えることで丸型になり、さらにアルコールを飲むことで体の代謝を脂肪合成側に傾けてより太るようにしました。一方、暑いところではピリ辛い植物が育ちます。例えば唐辛子は中部アメリカ、胡椒はインド、生姜はマレーシアなどの熱帯アジアが原産地です。そして、唐辛子のカプサイシン、胡椒のピペリン、生姜のジンゲロンはいずれも図19の同じ機構で交感神経を刺激します。

 

図19. 食べたものを耐熱として発散させてしまう仕組み

 

これらはいずれもピリ辛さという刺激を与えます。この刺激がポイントです。ピリ辛さの刺激はけがをしたときなどの痛みの刺激と同じです。この刺激を感じると体はアドレナリンというホルモンを分泌します。闘争ホルモンあるいは逃走ホルモンとも呼ばれるホルモンですが、それは、痛みが何らかの脅威を示唆するので、人はそれを排除するために戦うあるいは避けるために逃れようとするからです。戦ったり逃走したりするには筋肉を動かすエネルギーが必要です。アドレナリンはエネルギー源を蓄えている脂肪組織と肝臓にはたらきかけて、脂肪組織の脂肪を分解して脂肪酸を、肝臓のグリコーゲンを分解してブドウ糖を放出させます。そして筋肉がこれらを取込んで動かすエネルギーにし筋肉を盛んに動かします。ピリ辛いものを食べると体がほてる、顔が真っ赤になる、汗をかくというのがこれです。また、昔は、風邪を引くと生姜湯を飲んで汗をかいて治したものです。つまり、ピリ辛いものは蓄えている脂肪などを消費させるのでやせるわけです。

 

ーピリ辛いものは血圧を上げるー
これらの話を参考にすると、動物の脂をあまり摂らずに、ピリ辛い唐辛子、胡椒、生姜を食べればやせることになります。それは「ほんと」です。しかし、一つ問題があります。ピリ辛さは痛みと同じでアドレナリンを分泌します。アドレナリンは興奮させるホルモンですから当然血圧を上げます。お医者さんが辛いものは刺激が強いのでよくないというのは、血圧が上がるからです。血圧の高い人がピリ辛いものを食べると、さらに血圧が上がるので好ましくありません。
ところで、暑い所の人はピリ辛いものを好むと書くと、韓国は寒いのに辛いキムチを好むではないかと反論があります。でも、韓国に唐辛子が伝わったのは、人類の食習慣の歴史から見ると最近の出来事です。ポルトガルが南米で発見して日本に伝えた唐辛子を、加藤清正が慶長の役のとき(1597年)に朝鮮に持ち込んだといわれています。そして今の韓国人に、肥満の方は見当たりません。また、韓国の方は血圧が高いという情報もありません。ピリ辛いものの良し悪しは、食べる量によるのでしょう。

 

 

ーフコキサンチンー
平成17年におもしろい研究報告がありました。昆布、ワカメ、アラメなどの褐藻が含んでいるフコキサンチンという成分が体脂肪を燃焼させるというのです。その作用を図19に緑の線で示しました。食べたフコキサンチンはその一部が一時的に臓器脂肪や皮下脂肪組織に取込まれます。そして脂肪細胞の、ミトコンドリアというエネルギー生産器官に作用して、UCP1というタンパク質を多く作らせます。UCP1はミトコンドリアが作るエネルギーを熱エネルギーに変換させるタンパク質です。常態でもUCP1は少し存在しますので、私たちは食事をすると寒い冬でも体があったまるという経験を持っています。フコキサンチンはこれをさらに盛んにするのです。つまり体脂肪を消費させてそれを体熱として発散させます。また、フコキサンチンはがん細胞にアポトーシスという細胞自殺を招いてがんを予防するという作用も報告されています。このフコキサンチンは鮮やかな橙色の物質ですが、体が橙色に染まるほど動物に与えても異常は認められていません。そこで、アメリカなどの外国では大変なヒット商品になっています。科学的にはフコキサンチンのやせる作用は「ほんと」です。でも、やせる効果がある量は、生の昆布やワカメに換算すると一日100キログラム以上、現在市販されているサプリメントならば一日2000錠です。気長に一日数錠を数年続ければ少しずつやせるかもしれません。

 

 



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