16.オイルショック


オイルショックが引き起こした消費者の買いだめパニック
 ある日突然、スーパーの店頭からトイレットペーパーが消えた。これに端を発し、砂糖、しょうゆ、洗剤なども相次いで姿を消す。昭和48年秋の「オイルショック」は、日本全土に危機的なモノ不足を引き起こした。
 同年10月、第4次中東戦争の勃発によって、産油国が原油価格引き上げや禁輸措置を発表。世界は石油危機の恐怖に陥った。なかでも原油に関して輸入頼みの日本では、たちまち産業界に重大な影響が及んだ。
  原料不足や資材の高騰、操業時間の規制などにより物価は急騰し、インフレが発生する。しかし、実質的な石油危機以上に深刻だったのは、消費者のパニック心理であった。
 実際、ひどい便乗値上げも各地で増えており、「いま買っておかなければ、買えなくなる。モノがなくなる」という風説が口コミで広がっていた。不安はさらに不安を呼ぶ。どこのスーパーでも、開店と同時に買い物客が殺到。トイレットペーパーの棚は、あっという間に空っぽになっていた。続いて、砂糖、しょうゆ、洗剤など生活必需品すべてに買いだめが及ぶ。このため、商店では仕入れが追いつかず、「お1人様1個限り」などと規制を始めた。だが、この規制が消費者の不安をさらにあおる…。いつの間にか、際限のない買いだめのイタチごっこが全国で起こっていた。

消費者のくらしを守る生協に新加入組合員が殺到
 灘神戸生協(コープこうべの前身)も例外ではない。あちらこちらで、何百人という組合員が開店前から列をつくる姿が見られた。そこで12月に、「組合員の生活を守る生協」として、物資対策運営本部を設置。全力を傾けて、必需品の確保と公平な供給に取り組んだ。メーカーや問屋の協力もさることながら、やはり職員の奔走努力が功を奏する。モノ不足にもかかわらず、仕入れ量 が軒並み増加し、商品によっては対前月比2倍になったものもあった。
 結果、「スーパーになくても、コープに行けばある」「コープは便乗値上げをしていない」との声が出る。これに伴い、新加入組合員が激増。12月と1月のわずか2カ月で、5万5千世帯も増える事態になった。
 組合員の増加は喜ぶべきことであったが、その大半は「ほしいものさえ手に入ればいい」という目先の利益を追い求めての一時的な加入に過ぎず、協同組合の理念への賛同・理解には程遠いものがあった。
 また、「良質商品を育てるなかで、これまで組合員でつちかってきた“協同”の心も、今回の“トイレ紙騒ぎ”の前には、なんとあっけなかったことか、という思いが、多くの組合員の胸のうちを吹きぬ けるのです」(『協同』昭和48年12月1日)とあるように、組合員の心には重い不信感が残った。前代未聞の「買いだめパニック」の嵐は間もなく終息するが、灘神戸生協には新たな課題が突きつけられていた。

ムダを省いて合理性を追求する「生活見直し運動」スタート
 オイルショックで右往左往した反省から、今後は組合員一人ひとりが消費態度を改善していかなければと、翌年2月には「生活見直し運動」が始まった。
 具体的には、切れなくなった包丁は使い捨てにせず研ぎ直す、角砂糖より割安なグラニュー糖を使うなど、ムダをなくすためのノウハウをアピールする運動だ。組合員からもアイデアを募り、機関紙『協同』に掲載した。加えて、家庭会の協力を得て、「見直し運動推せん商品」100品目を選定する。これは、実利追求、ムダ排除、過大包装追放の3点を基準にしたもので、包装を節約して値下げした冷凍食品をメーカーに生産依頼するなど、消費者主体の生産を一歩進める、画期的な運動へと発展していく。
 同時に、包装紙類のムダをなくそうと、買い物袋「コープバッグ」の導入も始まった。53年にスタートした「買い物袋再利用運動」とともに、実質性重視の合理的なライフスタイルを提案していった。
 また、オイルショックの後遺症ともいうべき物価高には、「購買力結集運動」で対抗。特定の生活必需品への購買を呼びかけることで取扱量 を増やし、安く供給しようと奮闘した。さらには、生鮮品を除く全商品の価格凍結にも挑戦。次々と新しい戦略を打ち出し、組合員の生活防衛をすすめた。
 こうした取り組みは、インフレに悩む組合員の大きな支持を得る。公共料金の値上げや増税を行なわないよう政府に求める「生活防衛10万人署名」(昭和51年)では、予定を大きく上回る11万5千人の署名を集め、組合員自身に生協パワーの成長ぶりを認識させた。
BACK NUMBER    
1.2つの生協が誕生 11.生協法制定 21.播磨生協と合併
2.御用聞き制度発足 12.流通近代化に向けて 22.阪神・淡路大震災(前編)
3.家庭会の発足 13.「灘神戸生協の誕生」 23.阪神・淡路大震災(後編)
4.最初のセルフサービス店の試み 14.店舗・支部の拡大強化 24.震災からの復興(前編)
5.反購買組合運動 15.コープ商品開発 25.震災からの復興(後編)
6.甲陽・西宮・伊丹などとの合併 16.オイルショック 26.二十一世紀の新しい生協をめざして(最終回)
7.阪神大水害 17.商品検査室開設  
8.戦時中の生協(1) 18.支部改革  
9.戦時中の生協(2) 19.生活文化・平和・福祉活動  
10.戦後の苦境 20.コープこうべに名称変更